時刻表2万キロ
正直にいえば、万人受けしない。あまりにも偏屈で、くだらない。でもこの本は、
鉄道本の中でも限りない話と内容を秘めているとも言えると思う。
著者の宮脇俊三さんはこのほかに、日本最長片道切符の旅など、仕事をしな
がら鉄道オタクを地で行くような生活を書いているが、その一面がウィットに富
んでいて面白い。
時刻表2万キロ (河出文庫 み 4-1) | |
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この本の冒頭は、以下で始まる。
鉄道の時刻表にも愛読者がいる。
時刻表ほんらいの用途からすれば愛読の対象となるべき書物ではないが、
ともかくいる。
しかもその数は少ないという。私もそのひとりである。
で、始まり、客観的な記載から書かれており、冷静に自分を判断しながら書いて
いる点が、自身の紀行としての面白さを引き立てているのかもしれない。
日本最長の方とは違い、支線をどうしていくかの話なので、つながりはあまり強く
なく、章を飛ばしながら読んでも面白いと思う。
今回は、日本全国の鉄道制覇をかけての時間が克明につづられていく。内容
は正直に行って面白いかどうかは、人によると書いたが、国鉄の制覇方法や
数字にしていく楽しみ、詰めや、計画性のあり方など、ところどころに人間味を
感じさせているところをどう読み解くかであろう。
単純にその時の紀行を描いているだけなのだ。ただその中に、経験や、歴史、
感じたことを踏まえて記載している。
この時刻表の読み方は、一瞬の謎解きにも似ており、自分もその魅力は感じ
られると思う事がある。
いわゆるふつうの鉄道好きのおじさんが、列車を寝て乗り過ごしたり、酒を飲ん
でいても客観的な記載が、その心情の変化につられてしまうようになってしまう
のだ。
ちなみにノンフィクション賞をとっているそうで、なかなかすごいなぁと改めて感じた。